近年、いわゆる顎関節症やかみ合わせが関係しているであろう問題が非常に多く報告されています。 そこには不定愁訴と言われる原因不明の痛みや違和感がつきまとい、豊かな生活をも脅かしています。
このような不定愁訴を持った患者さんに対し歯科医師の多くは「噛み合わせが原因だ!」といい歯を削ることを平然と行います。しかし、このような治療ですべての患者さんがこの問題を解決することができていないのが現実なのです。
このページをご覧のあなたもその一人かもしれません。
当院では、世界標準の顎関節症治療の原則に基づき、あなたの苦痛や不安なを解消しています。 まずは気になる症状が改善することを目的に治療を開始致します。 はじめから“削ること”はしません。
削ったり、かぶせたり、マウスピースを入れたりしなくてもかみ合わせが関与する顎関節症や不定愁訴は消し去ることができるのです。
どうして歯や顎関節に問題が起きるのか?
顎関節症はもとより、歯が欠ける、セラミックが欠ける、または噛み合わせで歯周病が悪化するといったことでお悩みの方が非常に多いようです。顎関節症はどのようにして起きるのでしょう? 顎関節症の原因は「かみ合わせ」だけなのでしょうか?
現在、世界的健康の基準を唱えるNational Institutes of Health(NIH)では顎関節症を“多因子性”の疾患であると考えてきます。 顎関節症の原因は、その方の顎関節や筋肉の耐久性や形状、職業や性格などの影響を受ける精神的ストレス、歯並びやかみ合わせのバランス、そして上下の歯を触れ合わすという行為そのものの時間や力など様々な因子によって起こると言われています。 これらの因子が複合的に働き、その方の許容範囲を超えた時に顎関節症は発現します。
これらの因子の中で変化が起こりやすいのが精神的ストレスです。 ストレスは歯や歯茎に対するストレスであるとともに、交感神経を興奮させ自ら体を蝕んでいきます。 大学病院など口腔外科でいわゆる安定剤が処方されるのはこうした理由によります。 薬でストレスをごまかしても根本的な解決にはなりません。 ストレスをなくすことなど現在の日本の生活ではなかなか難しいのではないでしょうか?
顎関節や筋肉の耐久性は個人によって異なり、トレーニングなども治療法としてありますが、年齢による衰えなども考慮するとこちらもなかなか難しいのです。かみ合わせの治療には削る、かぶせるといった元に戻せない(非可逆性)な治療がほとんどです。ですから正しい診断と根拠なしに歯を削ることはできるだけしない方がよいのです。 もちろん、経済的にも負担は大きくなります。
このようなことからNIH1996年(図2)のような世界標準の治療手順として、「顎関節症の治療は初期の段階では元に戻すことができる治療とすべきだ」としています。
もちろん、あなた自身ができることとして精神的なストレスを解消するために「休養をとる」「環境を変える」「趣味を持つ」などの取り組みをすることは改善につながることでしょう。また、顎や筋肉を鍛えるのもいいでしょう。 最近では「パタカラ」というトレーニング器機を進める歯科医院も多いと聞きます。
しかし、そんな努力やお金をかけることなく症状を改善できるのです。
あなたの上下の歯は普段(食事の時以外)触れ合っていますか?
触れ合っているならばそれは1日にどのくらいの時間でしょうか?
(寝ている時間も含めて)24時間の間の上下の歯の触れ合う時間はなんと、「17.5分」だというのです。
これは、1969年Graf が発表した世界的に有名な論文です。
TCH(Tooth Contacting Habit)という新しい概念
近年の研究から、顎関節症を含む噛み合わせ関連の問題をおこしている方のほとんどが非常に長い時間歯を触れ合わせてしまう悪い癖がついていることがわかりました。これはよく歯科医がいう“噛みしめ”や“くいしばり”とは違います。 この癖は数時間単位、長い方は「歯は普通は噛み合っていないといけないんじゃないんですか?」と24時間ほとんど触れ合っていると仰る方も多いのです。 “噛みしめ”や“くいしばり”というとあなたの最大の噛む力の80%くらいで噛んでいる状態ですが、これを続けることはせいぜい10分くらいではないでしょうか?
TCHではごく弱い力で歯が接触し続けるのが特徴で、持続することで歯や歯茎や顎関節を痛めるのです。 子供の頃、普段口を開けていると「だらしないからきちんと口を閉じていなさい!」と言われたことはないでしょうか? こんなことをきっかけに“口を閉じる”=“歯を噛み合わせる”と信じ込み、それが悪い癖となっている場合もあるのです。 他にも、精神的なストレスや歯科治療、けがや事故、病気などをきっかけにこのような悪い癖が起きてしまう場合もあるのです。このような“上下の歯の異常な持続的接触癖”のことを
TCH(Tooth Contacting Habit)といいます。
この概念は東京医科歯科大学顎関節治療部准教授の木野孔司先生と鶴見大学歯学部の渡辺教授が考案されたもので現在、東京医科歯科大学では年間2500名の患者さんが来院され大きな効果をあげています。
当院のTCH是正プログラム
当院の噛み合わせ関連疾患の治療は、このTCHの考え方に基づいた生活習慣、症状、顎機能、筋肉などの総合的な検査に基づき、症状の改善を第一に治療を行います。
当院では“TCH是正プログラム”を用意し、歯を削らずに顎関節症の不快な症状を改善します。 TCHの是正ができれば症状は必ず改善します。
症状の改善がみられれば、TCHが起きた原因を解明し、その原因が“歯”にあるならば原因を取り除く治療を致します。このステージでは、顎関節、筋肉、歯の接触状態、顎位などを総合的に調べる咬合診査(歯科総合検査へリンク)の結果に基づきます。
このステージでは、再発防止が治療の目的で、歯科治療でなければ改善できない噛み合わせ関連疾患の原因因子を最小限に減らします。 このような考え方をベースとした噛み合わせ関連疾患に対する治療は時間こそかかりますが効果は早く、経済的な負担も少ないのです。
2012年2月テレビでTCHについて報道されたことをきっかけに、東京医科歯科大学顎関節治療部には全国から1日に70~80名の患者さんがお出でになります。
当院は東京医科歯科大学顎関節治療部西山暁准教授が顧問を務める「TCH研究会」のメンバーとして常に新しい噛み合わせ関連疾患をより簡単に解決するための情報交換と基礎研究のためのデータ集積を行っています。TCHの概念や治療方法が世界的に広がれば、顎関節症はほとんどなくなるとさえ言われています。かみ合わせの治療は、TCHが改善され、症状がなくなれば非常に効果的な治療となり、再発の予防につながります。
咬合調整、矯正治療などはTCHの改善がみられてから次の治療として行います。
当院では、最新の顎関節症治療のプロトコルに従い治療計画を立案いたします。 TCHの改善がされない状況での咬合治療(咬合調整、咬合再構成、矯正治療等)において治療中や矯正装置撤去後の顎関節症状の悪化が報告されています。 咬合治療、矯正治療は経済的、時間的負担が多く、患者さんにとってはその分期待も大きな治療です。 しかし、TCHの改善がみられないまま行った咬合治療によって期待した結果が得られない現実に直面し、患者さんも歯科医院側も非常につらい思いをされている現実がたくさん報告されています。
咬合治療:ステージ2
現代社会はストレス社会と言われるように、ストレスを起こす下人自体を完全に取り除くことは不可能と考えられます。精神的ストレスは自律神経に影響し、身体的な問題の原因となることも知られています。
しかし、精神科領域での治療では薬による症状の緩和が中心となり、顎関節症も口腔外科での治療ではよくマイナートランキライザー(精神安定剤)が処方され、症状は改善します。
しかし、根本的な改善にはならず、薬に依存する傾向が多々あります。
当院では、精神的なストレスについての対応は、普段の生活の状態、仕事、趣味などのお話を伺いながら人間関係などから来る、自覚の難しい精神的ストレスについて考え、お話の中からご自分で気づくことで効果をあげています。
また、すでにストレスについて自覚されている患者さんも、ご自分でストレスについてお話をされることで「自分の辛さを知っている人がいてくれる」「話すことでスッキリする」など、従来心療内科や精神科に行かなければできなかったセラピーの効果があり喜んで頂いています。 患者さんによっては診療時間中ずっとお話をされ、治療(削ったり、歯石をとったりなど)を全くせずお帰りになる方もいらっしゃいます。
顎関節症の治療においていわゆるマウスピースを使用する歯科医は非常に多いように思います。しかし、TCHの是正なく行われるマウスピースでの咬合治療はマウスピースを入れた状態で筋肉の緊張が起きるため、マウスピースがボロボロン削れたり、穴があいたりします。
もちろん効果も出ません。TCHの是正がうまくできているケースにおいても咬合についての歯科医師の知識と技術によって効果は雲泥の差が出ます。まずは、咬合についての十分な検査が必要です。
いくつかのタイプの違うマウスピースによる治療方法がありますが、装置によって治療目的や効果が違いますので詳しい説明が必要です。 但し、これらのマウスピースでの治療は装置によって原因がかみ合わせに問題があることを確認するためと、症状の改善にあるため、前提として次の咬合治療が必要となります。 もし、治療がここまでとなるとあなたは一生このマウスピースと縁が切れなくなってしまいます。 なんと不自由なことか…。
ここまでの治療では直接歯を削る、詰める、かぶせるといった元に戻すことができない処置(不可逆的処置)は一切しません。