山田歯科医院|渋谷区幡ヶ谷|一般・小児・審美・矯正歯科など

治療費について

医療法人社団 健美会 山田歯科医院 山田晃久院長


幡ヶ谷駅より徒歩約5分、甲州街道沿いにある白いモダンなビルにあるのが「山田歯科医院」。2011年に初台から現在の場所に移転し、8階から10階の3フロアからなる医院として新たにオープンした。8階は総合受付と患者とのコミュニケーションフロア、9階は検査と治療のフロア、10階は予防専門フロアと、院内は歯科医療のステージに対応している。山田晃久院長は、「デンタルインタビュー」を提唱し、患者との信頼関係を何よりも大切にしている。「歯の『修理』をするだけではなく、患者さんの不安や期待にこたえるのが歯科治療。そのために、患者さんの気持ちや考え、不安や期待、生活や人生への影響などを十分に聞き、口腔だけでなく患者さんを十分に知ることが必要です」。10年、20年と経過したメインテナンス患者さんの事例は700名を越える。徹底した検査やフォローアップ体制を整えた予防システムも、将来を見越した歯の健康の維持のための山田歯科医院の特色。「対症療法的な治療を繰り返して大切な歯を失わないために、正しい情報発信をしていきたい」と語る山田院長。歯科医療の現状への問題提起も鋭く、言葉の一つひとつから真摯な姿勢が伝わってくる取材だった。


(取材日2012年6月7日)


伝えられないあなたの思いを歯科医師に伝える
「デンタルインタビュー」を提唱

ー こちらの医院の特徴である「デンタルインタビュー」についてお聞かせください。

患者さんは歯についてのたくさんの思いを潜在的にお持ちです。しかし、忘れてしまっていたり、言いにくかったり、いろいろな事情で歯科医師に伝えることができないままでいます。それが歯科医療を受ける不安となり、不信感にもつながります。「デンタルインビュー」は、あなた自身も気づいていない、あなたにとって本当に必要な歯科医療は何か?を探すための歯科医療特有のコミュニケーションです。従来、歯科医院では「問診」という「どこが痛いの?」「どんなふうに?」「いつから?」というような「歯の問題」を解決する「診断」のためのコミュニケーションだけでした。しかし、患者さんは多くの場合、歯のトラブルから日常生活への支障があり、不安や悩みを抱えているのです。患者さんから見ると、先生はいつも忙しそうで、話をしにくい。診療台では、緊張して「はい」「いいえ」と答えることしかできません。患者さんは病気体験を通して「もう痛い思いをしたくない」「きれいな笑顔でいたい」「生涯おいしくものを食べられるよう、歯を守りたい」…といった思いをお持ちです。このような病気体験をベースとしたコミュニケーションによって「歯」だけでなく「患者さん」を診る歯科医療のコミュニケーションが「デンタルインタビュー」なのです。

― 患者さんが本当の問題に気づかなければ……。

例えば、患者さんがホワイトニングを希望して来院しました。ところが口腔内をみると歯茎は腫れ、血が出ています。こんな状態でも、「患者さんの希望だから」とホワイトニングをしてしまうのが最近の歯科医療の傾向です。患者さんは専門家であるはずの歯科医院を訪れながら、歯周病に気づかず、放置してホワイトニングをするのです。せっかく歯科医院に行ったのにこれでいいのでしょうか?患者さんは望むことをするのには、何の抵抗もなく、費用も出して頂けます。しかし患者さんが気づいていない問題を指摘し、治療に協力して頂くには、十分な説明やそのための時間が必要なのです。

― デンタルインタビューは、どのような流れで行われるのでしょう。

来院される患者さんの多くは、お電話で診療についての相談を受けています。お電話である程度のお話を伺ったうえで、直接お会いしての診療相談を希望される場合は、こちらから事前に当院についてのご案内と来院時にお持ち頂く質問表をお送りしています。この質問表に記入して頂くことで、現在気づいている問題点だけでなく、過去の問題点や気がかりなこと不安なことなどを事前に十分考えて頂くことができます。悩みの多い方ほど記述が多く、別紙に書いてお持ちになる方も。初診時には8Fの応接室で90分のデンタルインタビューを行います。記入いただいた質問表をもとに患者さんの抱えた問題や不安をすべて伺いますので、「こんなに聴いてもらったのははじめて」と皆さん仰います。ですから、90分はあっという間なんですよ。歯科医師は治療マシーンではありません。感情を持ったひとりの人間なのです。あなたの思いが伝われば伝わるほど、一生懸命あなたのことを考えるのです。このように、患者さんの歯科治療への思いを十分にお話ししてもらい、歯科医師が問題を共有することで、多くの患者さんのうちのひとり、ではなく、口腔の問題を抱えた「あなた」を診ることができるのです。

悪化させる3大要因を徹底的に調べる「歯科総合検査」

― デンタルインタビュー後の治療は、どのように進められていくのでしょうか。

「口」は笑い、話し、食べるひとつの臓器です。その臓器を健康に保つには、1本の歯だけ、歯茎だけ、病気だけ見ていたのでは足りないのです。歯の病気を悪化させる3つの要因:歯の問題(虫歯)、歯茎の問題(歯周病)、そしてかみ合わせの問題(咬合ストレス)がすべて、その患者さんにとってトラブルとならない状態であるかどうかを正確に調べる「歯科総合検査」が必要です。「歯科総合検査」によってあなたの口腔内の健康状態が正確にわかり、あなたにとって本当に必要な歯科医療が明確になるのです。あなたはご自分の歯が何本あるかご存じでしょうか?治療してある歯は?神経をとった歯は?親知らずは?自分の体の一部なのに多くの患者さんはご自分の歯や歯茎のことを知りません。熱があれば体温を測り、血圧を測り、生活のことなどを聴いて診断するのは内科と同じです。口腔内写真、プラークコントロールレコード、歯周組織検査、歯型、かみ合わせの検査、などを行います。当院の検査は診断のための資料収集ではなく、患者さんにできるだけご自分の口腔の状況をわかって頂くための検査ですので、十分に時間をとり、ひとつひとつわかりやすく説明します。検査に時間も手間もかけるのは、歯は一度削ったらもとに戻らないものなので、簡単に治療に入ってはいけないからです。また、「インプラントにしたい」「セラミックの歯にしたい」と来院した患者さんにも、検査はすべて行います。セラミックの歯で見た目が美しくなっても、インプラントで噛めるようになっても、歯周病を放置していては、セラミックもインプラントもダメになってしまうのです。

― 今の患者は、歯の健康に目がいかない傾向があるのでしょうか。

歯の健康に関心が高い方が多いのですが、歯科医療者の情報発信の仕方が間違っていたのです。「セラミックがいい」など、「物」の情報に偏ってきましたから、患者さんの頭の中にも物の情報ばかりが蓄積されてしまう。いいものを入れれば長持ちするというような間違えた認識が生まれるのです。こういった歯科医院からの治療方法や「物」についての情報に振り回され正しい歯科医療を受けられない「歯科難民」が非常に多くなりました。歯科医院を何軒も回っているうちに、心まで病んでしまう方もいらっしゃいます。歯科医療は歯科医師の「手」でひとつひとつ行われるものです。同じセラミックでも先生によって、先生の気分や体調によっても違ったものが入ってしまうのです。もちろん作る技工士の技術によっても違います。決して「いいもの」=「いい治療」ではないのです。患者さんに目先のことだけでなく、10年後・20年後の歯の健康を考えてもらうのも、プロの歯科医師の仕事です。その人が潜在的に持っている「治そう」という気持ちを引き出し、その人に本当に必要なことは何なのかということを一緒に考え、明確な目的に向かって共に歩むのです。

― こちらの患者さんは、紹介の方が多いとお聞きしました。

1997年頃、雑誌「Hanako」への掲載を機に、「バンテーヌ」「婦人画報」など女性誌などに度々取り上げられそのたび患者数が激増。治療の質とサービスの維持のために2000年から完全紹介制としました。紹介は、当院患者様からのご紹介、医療機関、公共機関からのご紹介。1980年から30年間過ごした前診療所も設備の老朽化が進み、増え続けるメインテナンス患者さんの対応が困難となり2011年現在の幡ヶ谷に移転致しました。ユニット数も増え医師,スタッフの技術の向上も手伝い、現在は紹介患者限定とはしていませんが、宣伝はしていない為口コミ、ご紹介での来院がほとんどです。ご家族や親せき、親しい友人などはじめから人間関係があるとこちらも話がしやすく、親身になって考えやすいのは紹介患者さんのいいところだと思います。ご近所の方よりも遠方の患者さんの方が多く、80%以上が1時間以上かけて全国各地から来院されます。

歯科医療でもっとも大切なのは、
「あなたのために」という真摯な「心」

― 信頼関係を軸とした診療にされたきっかけはどのようなものでしょうか。

私が歯学部を卒業し、父が経営していた以前の医院に勤務した頃はバブルの真っただ中。景気がよく、「こういう治療をしましょう」と提案にも、「はい」と言う患者さんが多かったんです。私は、ただ技術を磨けばよかった。バブルがはじけて患者さんが減り、時間ができた時に、ある患者さんといろいろな話をする機会があったんです。仕事や生活のこと、家族のことまで話して、その方に「先生とこういう話をしたのは初めてだよな」としみじみ言われたのです。その時、「この人の歯をよくしてあげたい」と心から思ったのです。技術の未熟な頃は、自分の「技術」を高めることばかりを考えて患者さんとのコミュニケーションが大事だとは考えなかった。治療技術を身につけると、今度は経験を積んで知識を活かし「頭」で治療しようとします。治療の腕は上がっていますが……?しかし、結局のところ「心」が治療するのです。今は、スタッフにも「心から患者さんを診る」ということを徹底させています。予防を担当しているスタッフに、「患者さんがいくら説明しても歯磨きしてくれない」と相談されることがありますが、そういう時は「歯磨きしてもらえるようお願いしましょう」とアドバイスします。「あなたのことが本当に心配なんです」という熱意があれば、必ず患者さんに伝わるはずです。

― 予防についての特徴についてお聞かせください。

当院の予防についての取り組みは、父の時代にさかのぼります。1970年代の米国の第1期予防ブームに出会った父は大量の歯ブラシを土産にブラッシング指導を始めたのです。当時は、歯科医院で歯磨き指導をするのは非常に珍しく「あそこの歯医者はおかしい」とよく言われたものです。当院の予防は当時のような、歯科医療者が指導し患者さんがそれに従う、医療者主体の予防ではなく、患者さんが自ら問題点に気づく支援と、解決策を専門家として医療者が提案する、患者さん主体の予防です。日本では現在、PMTCに代表される医療者主体の予防がもてはやされていますが、歯科医院に行かなければ予防ができないこの方法では、東日本大震災などの教訓から自分の口腔の健康を守ることはできません。「健康は与えられるものでなく自分で手に入れるもの」これを支援するのが当院の予防です。予防プログラムでセルフケアの技術を身につけ、ご自分の口腔内の状態が自分でわかるようになる。高い健康観を身につけた患者さんの意識と技術をメインテナンスでフォローアップ。10年、20年と通い続けて頂けるのは、メインテナンスによってセルフケアの意識と技術が保たれ、口腔の健康が維持されているからです。「歯を失わない」「治療を繰り返さない」ということを前提にしないとどんな治療をしてもムダですから、予防は大きな柱です。

― これからの展望をお聞かせください。

不況が続くなか、歯科業界では、医療の質を上げることに人とコストがかかることから、インターネットなどでの集患、増患が盛んに行われ、患者さんの獲得に躍起です。そんな小手先の情報に翻弄され歯科医院を漂流している「歯科難民」があとを絶ちません。待合室で待つたくさんの患者。中から名前を呼ばれレントゲン室に直行。診療台で歯科医師から質問を受け、イスが横になり口をあける。こんな歯科医院のよくある風景が日本の歯科医療のスタンダードになっていますが、まったく別の歯科医療があることを一人でも多くの方に知っていただきたいですね。当院の診療は2000年コロンビア大学で始まったナラティブ・メディスン・プロジェクトをいち早く歯科医療にとりいれたものです。「ナラティブ・メディスン」とは、その患者さん固有の病の物語を認識し、吸収し、解釈し、それに心動かされて行動する「物語能力」を用いて実践される最新の医療です。インプラントやCTに代表される最新の歯科医療機器や技術もそれを扱う歯科医師やスタッフの「心」によって凶器にも変わるのは、すでに報道でもご存知かと思います。機器や技術はとても大切ですが、それ以上に「これからもずっと通い続けたい」といわれる歯科医院でありたいと思います。

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